市場において顧客を引き付けるためには、その市場の成熟度に応じて、商品またはサービスの方法を変えながらマーケティングしなければいけないそうです。

 

私たちが係わる、設計市場においてはどうでしょうか?

 

例えば介護施設などは、特にグループホームが初めて出てきた20年前には、ただ「管理しやすい施設設計をします」と言うだけでよかったと思います。

 

それから数年後には、「シュミレーションによって年間これだけの利益が出ます!」と言う様に、大胆な約束に移ってゆきます。

 

さらに進むと、マーケティングによって仕事をとり続けるには、いわゆる「ユニークなメカニズム」を自分の主張と約束に入れなくてはいけませんでした。

これは建築設計事務所が増え、競合に対して勝ち抜くための戦略になっていたと考えられます。

例えばデイサービスと認知症グループホームを組み合わせた複合施設設計が得意です!と言う様に。

またほかの例では、お風呂場の浴槽をヒノキ風呂で設計することが得意です。

と言うユニークな設計者も出てきました。

 

そして成熟の最終段階では、マーケティングは、より大きくより大胆な主張と、「ユニークなメカニズム」に重点を置くやり方から、より見込み客中心のやり方へと変化しなくてはいけません。

どういうことかというと、成熟の最終段階に到達した今、見込み客の共感を呼び、効果を出したいのであれば、見込み客の経験に焦点を置き、見込み客の体験と一体となったマーケティングを実施しなくてはいけないということです。

 

私たちのクライアント対象は、初めは施設の事業者でしたが、最後には、施設利用者に移ってゆくのです。

そうなると、事業者目線で設計を考えていたものが、今度は利用者目線になってくるのです。

そうなってゆくと何が大きく変わってくるのでしょうか?

 

利用者が入居されなければ、いくら施設を作ったところで、成り立ちません。

しかし契約するクライアントは、事業者です。

 

ほとんどの設計者は、自分のデザインしか考えていませんので、これらの成熟度に関係なく、すべて同じものが設計されてゆきます。

またクライアントもその違いは判りません。

この違いがわかるクライアントだけが生き残ってゆくのでしょう。

 

 

まずは、「自分のターゲット市場の成熟度」を理解し、その後、そのレベル特有の要求に対処したマーケティングを実施することが大事なのです。

ただ現在の日本においては、最終消費者が満足するものでないと、繁栄できません。

これが分かる設計者は、ほんの一握りだと思います。

 

時には事業者に対し、「そんな計画では高齢者が入居しませんよ!」とはっきり言える設計者にならないといけませんね。