耐震診断とは?
耐震診断とは地震が起こった時に、建物被害の大小を知ることです。
建物に耐震性があるかないかですが、その前に、ご理解していただきたいことがあります。
建物の多くは、コンクリートや、鉄、ガラスでできています。決してゴムではできていません。なので、お茶碗のように割れてしまったら元には戻らないのです。
つまりこれらの材料は、塑性変形なのです。ですから耐震診断の判断で出てくる耐震性能も、「地震エネルギー」で考えています。耐震診断とは、この地震エネルギーを吸収できる能力の事なのです。
1回の大地震では診断上OKでも、2度、3度の大地震が襲ってくれば、倒壊する危険性があります。
耐震性能とは?
飴タイプ キャラメルタイプ
同じ耐震性能を持つ建物でも、飴の様に耐力の大きい建物と、キャラメルの様に変形能力の大きい建物があります。
建物の耐震性能は、地震のエネルギーを吸収できる能力の事です。飴タイプの赤の斜線面積と、キャラメルタイプの黄色の斜線面積はほぼ同じなので、同じ耐震性能を持つと考えれれます。
それぞれのグラフで、直線から曲線に変わる部分が、弾性変形限界です。これを超えると元には戻らなくなってしまいます。
飴タイプの強度の指標はCで示されます。キャラメルタイプは粘り強さの指標でFで示されます。粘り強さの事を別名靭性(じんせい)ともいます。
建物形状について
建物形状に関しては、いくら丈夫に作っても、頭でっかちな建物や、平面的にも、階段や壁の多い部分と、窓ばかりあり、柱しかない部分ががあると、バランスがよくないですよね。
壁などがバランスよく配置していないならば、弱くなってしまうことは、感覚的にわかると思います。
これは形状指標と言い、記号はSdと表記します。
経年状況について
経年状況は、現場調査によって、建物を老朽化の度合いを判断するものです。
いくら丈夫な設計をしていても、バランスの良い壁を配置していても、実際コンクリートが古くなり、設計時の硬さが出ていなければ、弱い建物と言うことが言えます。
これは経年指標と言い、記号はTと表記します。
耐震性能の求め方
耐震性能は、一般的にIs値であらわされます。このIs値の構成は、先ほどのC、F、Sd、Tの掛け算です。
Is=C×F×Sd×T
掛け算と言うところが、ポイントなのですが、その意味が分かりますか?
例えば、いくらC、F、Sdの数字がよくても、コンクリートの劣化が激しければ、それだけで建物は壊れてしまいますよね。
つまり、これらの指標で、1つでも悪いものがあれば、そこまでしか耐力は発揮できないのです。
金属のチェーンを考えてみてください。このチェーンを両方から引いた時に、1つでも弱い個所があれば、そこが壊れますよね。
掛け算であることは、このことに似ています。弱いところを襲うのが自然災害です。
耐震診断の基準(Is値)とは?
合格ラインである、Is値とは、構造耐震指標のことをいい、地震力に対する建物の強度、靭性(靭性:変形能力、粘り強さ)を考慮し、建築物の階ごとに算出します。「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)の告知(平成18年度国交省告知 第184号と185号)により、震度6~7程度の規模の地震に対するIs値の評価については以下のように定められています。
Is値が0.6以上 倒壊、または崩壊する危険性が低い
Is値が0.3以上0.6未満 倒壊、または崩壊する危険性がある
Is値が0.3未満 倒壊、または崩壊する危険性が高い
Is値と過去の地震の被害分布
①:被害地震が未経験の建物のIs値分布を示す。2.5以上のものも世の中にはありますネ。
③:1968年十勝沖地震(M8.2 震度6)及び1978年宮城県沖地震(M7.4 震度5強)で中破以上の被害を受けた建物群のIs分布
これを見ますと、Is値が0.6以上になれば、中破以上の被害を受けていないことが分かります。
やはり目安として、Is値が0.6以上になることを一つの目標としていただきたいと思います。
そうすれば、中破以上は起こらないと言えるからです。中破以上にならなければ、命は助かるわけです。
それでは、中破とはどのような状態をいうのでしょうか?次をご覧ください・・・・・
被害状況と被害
日本建築学会によって被害の大きさに応じて、軽微から崩壊まで5段階のランクを定められています。