建築士が住宅の設計を売るとき、最も注意しておかないといけないことがあります。

これを頭に入れておかなければ思う様に契約を獲得することが出来ません。

それは何かと言うと、「設計・監理」は売りづらいということです。

なぜこれに注意しないといけないのか?

それは、ほとんどのお客さんは自分の住宅の設計を実際に頼んだり、建築士と打合せをして、創っていったという経験が無いのです。

あったとしても、人生で1~2回でしょう。

だから、設計士とは具体的にどういったことをするのかがイメージできないのです。

 

工務店さえあれば、事足りると考えている人もいます。

もちろん工務店には社内か、または下請として、建築士は必ず関わっています。

しかし多くの顧客には見えません。

 

営業マンが表に立ってコミュニケーションするため見えないだけです。

 

また設計料は高額にも関わらず、内容が不透明なのも問題。

これだと、なかなか購入まで結びつけるのが難しいことがお分かりになると思います。

 

設計料は必ず初めに、臆せず提示することも必要。

では、どうすればいいのか?

 

ビジネス書などには、下記のように書いてあります。

まずはフロントエンド商品(無料かまたは安くて、より多くの人が欲しがるもの)を購入してもらい、その関連商品である、バックエンド商品の契約につなげてゆくという方法。

まず、設計の前に他の安価な商品を買ってもらうということですが、一見よさそうに思いますが、なかなか設計に結びにくい。

 

恥ずかしながら私の失敗例を公開します。

私は、福祉施設のブームも一巡し、初期の建物にはリフォーム需要があると見込んでいました。

それである商品を売り込むことを思いつきました。

これはTOTOの製品で、ベットサイド水洗トイレというものです。

トイレの給排水がホースで出来るもので、約2mの範囲で、トイレを自由に動かすことが出来るものです。

この商品が出た時に、私はすばらしいトイレだなと思いました。

なぜなら今までの介護施設であれば、ほとんどが椅子型のポータブルトイレでした。

これの使用後は、介助者が汚物を処理しないといけません。

容量の問題もあり、1回使えば必ず1回処理が必要になるのです。

もちろんにおいも立ち込めて、なかなか大変な作業となります。

なのでこのベッドサイドトイレ1個を売り込めば、労働力の低減になり、さらに施設の他の水回りのリフォーム契約ができると考えたのです。

うまくゆけば施設の居室全てに取り付けることが出来るのではとも考えていました。

そしてこの図の裏面にDMを書き、ラミネート加工したものを、社会福祉協議会に配って歩いたのです。

必ずこのトイレを必要とする人がいるはずだ!・・・・・・と勝手に思いながら・・・。

50件ぐらいは配ったでしょうか?

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しかし待てど、暮らせど、一度も連絡は来ませんでした。

答えは明らかでした。

要介護度がある人は、基本的に介護保険での購入になります。

年額20万までは、介助製品の購入やリースなどが出来るようになっています。

このトイレは製品そのものが30万円を超えてしまっているのです。

これでは買うわけがありません。

一部の裕福な人が自宅の改装のためには購入したかもしれません。

しかし私が配った先は、介護施設をまとめている機関だったのです。

完全に市場を間違えていました。

まさしく商品に惚れてしまうと、お客さんが見えなくなってしまうという話でした。

皆さんくれぐれも商品に入れこまないようにしてください。