施主の変化を思う

 

約30年間、建築事務所を経営してゆく中で、施主との打ち合わせの時に、大きな変化を感じています。

とりわけ近年の10年間の変化は大きいです。

話がかみ合わないのです。

それは世間一般の建築物に関する認識、特に建物の造り方に対する認識の違いからです。

建築関係者ならばわかる事なのですが、それはプロジェクト思考をするかしないかの違いなのです。

少し説明をさせていただきますと、建築士などは、常に「プロジェクト思考」です。

一方施主の方々は、プロジェクト思考から物々交換の「購買思考」に変わっていってます。

この違いを持ったまま打ち合わせに入る事になります。

そしてお互いがぶつかって???になるのです。

例えば、施主がこれぐらいの新築の建物ならばいくらぐらいかかりますか?と言えば、私たちは坪当たり大方これぐらいかかりますと返答はしますが、材料や設備によっては2倍近くになることもあり、普通一概には言えません。

ベースではこれぐらいですと答えるのみです。

標準的なベースプランを元に話しをするしかありません。

だからこそ逆に予算はいくらぐらいを考えていますか?とこちらから聞くわけです。

お金からどれぐらいのプロジェクトが出来て、施主が希望する工事の優先順位を考え、希望をかなえてあげようとするわけです。

しかし施主はいくらで出来るかわからないので専門家のあなたに聞いているのよ!と言います。

これでは話は平行線です。

そして施主は少しでも安くできないかと考えて一所懸命に建築士や建設会社を探して回っているわけです。

私たち建築士から言わせれば、施主の希望もすべてが決まっているわけではないので、豪華な設備一つで施主の予算MAXを上回ることも多いです。

さらに難解なものにリフォーム工事があります。

とりわけリフォームは壊してみないとわからないと言った、予算決定出来ない、未確定な部分も存在しています。

その時プロジェクト思考であればよいのですが、購買思考であれば、追加工事、工期延長など認めないという施主も多くなっているのではないでしょうか?

初めにプロジェクト思考を話し、あくまで購買思考の施主と判断した時点で、建売を勧める方が無難でしょう。

なぜこんなことになってしまったのでしょうか?

やはり多くの施主に未来に対する不安があると同時に、私たち建築士も、こだわりの空間や新しい生活様式や、新しいムーブメントを提供できなかったところに問題があるようにも感じています。

そして施主が特に設備用品を重要視し、建築物全体までもが工業製品と言う認識になっているのではないかと思います。

私たちから見れば、住宅が工業製品であるわけはなく、今でも大工や左官、クロス張りなど、そのほとんどすべてが職人の手で出来ているのですがね。

 

今日のまとめ

  • 今日の施主は、建築物を購買思考で手に入れようと考えている。
  • 施主にプロジェクト思考を教え、それでもわからない場合は、建売を勧める。