私が魚津社寺工務店に入社して間もないころの話です。
木造建築の設計をしたいと思い、入社したのですが、とにかく右も左もわからず、簡単な建築部材の名前すらわからないのです。
例えば、架木(ほこぎ)、平桁(ひらけた)、地覆(じふく)などです。
もっともっとわからない名前がたくさんあったのですが、最初に言われた単語がこれらでした。
木造建築が好きな人には、すぐにわかると思うのですが、当時の私には、わかりませんでした。
お寺の外周に張り廻らされた縁側の手すりと言ったら分かるかもしれません。
またそれらの見積もりを任されても、木の組み方が分からないので、ほぞの内部の長さなどを見込まず、木取(きどり)を間違えてしまうこともありました。
また架木(ほこぎ)の端部は、跳ね上がっているのですが、かなり大きな木の塊から削り出すため、一般部の径と長さだけで立米単価を出してしまうと、赤字になってしまいます。
また同じことで、海老紅梁など大きくうねっていますが、これなども大きな木材で削り出すことを考えて見積もりしていかなくてはいけません。
平行垂木にしても、厳密には1本1本違います。
隅に行くほど、断面形はひし形になってゆくのです。
そして私でも最終的に軒のラインで時代判別が出来るようになりました。
ここまで来るには、かなり時間はかかりましたが、それには理由がありました。
いろいろと分からないことだらけでしたが、尊敬する上司の方から、1冊の本をプレゼントしていただきました。
それが「近世社寺建築の手びき」―みかたと調べかた― 編集・発行 日本建築史研究会 著:太田博太郎先生です。
太田先生を中心として、当時の学生が集まって、調査したもので、時間を惜しまず図面化してあり、商業主義にとらわれていない、純粋に調べ・作り込まれた本です。
これは本と言うより、ブックレットになっています。
これがよいのです。
必要な部分を、コピーすることもできます。
たった22ページのA5判のもので、これをもって近くの神社ゆくと、いろいろと発見があるのです。
例えば、虹梁、木鼻、蟇股。
これを見ながら現地の神社やお寺を見ると、時代判別できるようになります。
この本も残念ながら絶版ですが、あまりにも良い本なので、現在、出版社と話し合いをしております。
もし購入したい希望がありましたら、ご連絡ください。1冊1,300円(送料込み)です。
ただし申し込まれても、弊社がまとめて出版社に再発注する形となりますので、お時間をいただくことになります。
ご了承ください。
下記より、「近世社寺建築のみかた」希望と書いて、申し込みをお願いいたします。