建築士として起業する時、最初に直面するのは、自立できるかどうかという壁である。
特にこの壁は、サラリーマンや役人が多い現代において、乗り越えるのが極めて困難な壁となって、我々の前に立っている。
労働は生産力の一部として分業組織化され、細分化している。
人の働き方は、管理組織の中でオペレーションの部品として標準化されている。
つまり、高校大学を卒業して、最近のとりわけ大企業に就職すると、働く者は、どこかの部署を人事異動で出世しながら転勤する。
この様な組織人の生き方と考え方が、自然と身についている。
これが、戦後何世代にも渡っているので、組織思考が日本の常識にまでなってしまっている。
知らぬ間に取りついてしまったこの思考が、起業の邪魔をする。
例えば、会社にいる時に、新しい部署を新設する時には、事業計画などをきっちり作ってから、会社の承認後に進めてゆく。
しかし事務所での独立などは、行動しながら、修正を繰り返して進むしかない。
何しろ独立当初は、誰かの承認などいらないし、何をしても自由で、しかもお金がない事がほとんどなのだからなおさらだ。
お金を得るためには、1にも2にも行動しかない。
また同時に問題解決も常に考え続けないといけない。
今までは別の部署の問題だと言って係わらないことも出来た。
しかし、その問題を一番良い解決策ですぐに解決しないと、事務所が停滞してしまう。
例えば集客問題があったとしよう。
解決するために何が必要なのか?
お金でホームページを作ってもらってそれで解決なのか?
自分でホームページ作成の学校なりに行ってスキルをアップさせて解決させるか?
知り合いが多いので、JVを組むのか?
異業種交流会に出るのが早いか?
どの解決策を選ぶかによっても大きく違う。
今持っているあなたのリソースと、会社の方向性を考えて決めないといけない。
選び方によって、あなたの会社の方向性までが決められてしまう。
またもしあなたがサラリーマンで、会社を辞め、独立を決意する時、家族や仲間が心配しないわけがない。
現在属している組織を辞めるなという「魔女のささやき」が聞こえ、そのジレンマに悩むだろう。
起業経営が、何か天才的な才能で実現するような誤解があるようだが、実際は全く違う。
壁や問題の連続が待っているのだ。
地道に進むしかない。
むしろ、正しく問題に向き合い続けることこそが、起業経営の正しい在り方だ。
素直に自分と向き合っていける人だけが生き残れる世界だ。